日常日記

店長の日常

5時台に起きた。
起き、昨日、本屋「象の旅」で買った村上春樹の新刊「街とその不確かな壁」を読む。とてもよい。まだ「我が輩は猫である」を読んでいる途中だったから(しかもまだ5分の1くらい)、新しい本を買う予定はなかった。ただ「象の旅」の雰囲気が好きだから行きたかっただけだった。「象の旅」で本をいろいろと見、興味を覚えた本は手に取り、開いて読んだ。とても心地よい時間を過ごしていたのだけど、本棚の上のほうにあった「ガリバー旅行記」に手を伸ばし、それを引っ張った瞬間、ブックスタンドと本が数冊、一緒に床に落ちてきてしまった。ぼくには、たぶん、不手際は何もなかったように思う。ただ、「ガリバー旅行記」を引っ張っただけだった。もちろん、無理に引っ張ったわけでなく、スッと引っ張っただけだったのに、ブックスタンドと本が数冊、上から一緒に落ちてきてしまった。ブックスタンドは鉄製だったから、落ちた瞬間、ガラガラ、ガッシャーン!と結構な音がした。店主さんが慌ててやってきて、ブックスタンドと本を拾い上げ、ぼくが「すみません」と謝ると、「大丈夫です」と言い、ブックスタンドと本を本棚に戻した。その瞬間、ぼくの心はうしろめたさと罪悪感でいっぱいになり、何も買わずにお店を出るという選択肢はなくなった。「象の旅」には、興味がそそられる本がたくさんあった。でも、読むのが遅いから、全部読むのは到底不可能だ。それにまだ読んでいない夏目漱石の本がたくさんある。「象の旅」に漱石の本があれば、ぼくが持っていない本を全部買うこともできたのだけど、やっぱり昨日も、漱石の本は置いていなかった。それで迷ったあげく、「街とその不確かな壁」にした。理由は、もちろん、いつかは読みたいと思っていたということもあるのだけど、まだ出たばかりだから、読み終わってからメルカリに出せば、2000円くらいで売れるだろうというけちくさい考えが最大の理由だった。でも、なかなか面白く、読んでいると不思議と心持ちがよくなるから、結局、売らないかもしれない。自分がよいなと感じた本を繰り返す読むのは楽しい。繰り返すことでしか得られないものがたくさんあると、繰り返し読むたびに思う。とはいえ、新しいものに対する誘惑というのは常にある。だから、つい買ってしまい、読んでいない本が積まれていくことになる。この辺はとても悩ましいところだ。
「街とその不確かな壁」をレジに持っていったときに、店主さんに、「さっき落としてしまった本は大丈夫でしたか?」と心配になって聞いたところ、「たぶん、大丈夫ですよ」と言ってくれたので、ちょっと安心した。でも、心の中では、依然として、「自分はたぶん悪くない」という思いは残っていて、今も、そう思っている。ぼくは、常に悪者にされることを恐れているのだ。