日常日記

店長の日常

本日2本目のブログ。

旧日常日記の前の昔の日記からです。19年前の日記です。すごく久しぶりに読んだけど、仕事中、猛烈な歯痛に襲われたことで、せっかくご来店されたお客さまを何とかしてご入店させまいと頑張っているのが、面白かった。これを読むと、「よくもまあ、こんな人間がその後、19年もお店を営業できたな」と思われることでしょう。

前半と後半があります。

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2004年08月18日(水)  <No.23 - 2004.08.18.(WED)17:27 >

昨晩、悶絶した。

とは言っても、あまりの気持ちよさに悶絶した訳ではなく、その逆で、あまりの痛さでだ。なんの痛さかと言うと、歯。あんなに歯痛で苦しんだのは、小学生以来ではないだろうか。ここ10年以上、遠ざかっていた痛みは、立っていられないほどで、歯だけでなく、耳や頭まで痛い。僕は、ベッドの上で、苦痛に身を捩り、うーうー呻いていた。食欲がないから、鎮痛剤をすきっ腹のまま、飲んだのだけれど、気持ちちょっと楽になったかなと思うだけで、少し時間が経つと、瞬く間の間にズキズキ、ズッキーーーン!と痛み出す。「こりゃたまらん。辛抱ならねえ。仕事にならんぞ」と思い、薬局に走り、「今治水」という、直接虫歯に塗る応急処置的な薬を買った。しかし、それさえも、僕を歯痛の苦しみから、完全には解放してくれなかった。その時の時間は、確か、夜の8時ごろだったか。行きつけの歯医者がオープンする時間まで、あと12時間以上もある。気が遠くなりそうだった。思わず、臨時休業にしてしまおうかという考えが頭をよぎる。でも、歯が痛いからお休みだなんて・・・。情けない、情けなさ過ぎる。そして、思いとどまる。

こんな苦しみの中、夜の部で最初のお客さんが来た。普段は嬉しいお客様もこの日だけは違った。出来うることなら入って欲しくない。だから僕はこう言った。「今日は、暇なんですよ~。今、誰もいないんですよね~」出来るだけ痛みでしかめっつらにならないように、振り絞った笑顔で。それを聞いたそのお客様、「でも、まだ早い時間だから、これから他のお客さんも来ますよね」と。(うわ。もしかしたら、入る気か。困るぞ。おい)。僕はこう応える。「うーん。お盆明けで、しかも今は、オリンピックの真っ最中ですからね~。今日はちょっと暇になりそうですよ」と。はっきり言って、「入るな」と言ってるようなもんだ。そのお客様は、「じゃあ、また時間を見てからきますね~」と、感じの良さを残して、去っていった。あー、僕がこんな状況じゃなかったら・・・。

しばらくして、依然地獄から来たかのような痛みに耐えていると、またまたお客様が。今度のお客様は、僕が店内に誰もいないと告げると、素直に帰ってくれた。っていうか、そんなに辛いんだったら、臨時休業にしろよ!って感じ。

10時を過ぎて、またまたお客様が。今度はご新規さんだ。ま、誰もいないから帰ってくれるかなと高をくくっていたのだけれど、「誰もいない」と言うと、「それじゃあ、待ちますよ」と信じられないことを言う。僕は思わず、「ええ!いいんですか!」と言ってしまった。

でも、結局12時までどなたも来られず、そのお客様は帰っていかれました。僕が、「暇ですみませんでした」と言うと、「いーえー大丈夫ですよ」と。ほんといい方である。是非とも、また来て欲しいカップルさんだ。っていうか、やる気のないお前のせいだろう!って感じ。ほんと、すみません。

店内にやっと誰もいなくなって、ほっと安心して悶絶していると、またまたピンポーンとお客様が。でも、すでに生きる気力をなくしていた僕は、「すみません。お客さんがいないので、もう終わりました」とお引取り願った。その後、すぐに表の鉄扉を閉めたのは言うまでもない。

しかし、まだまだ僕の地獄の眠れぬ夜は続くのであった・・・ 

 

2004年08月20日(金)  <No.24 - 2004.08.20.(FRI)15:54 >

気になる?前回の続き

閉店後は、思う存分悶絶することが出来た。一人店内で、「ぐわー」とか「耐えられねー」とか「もう死ぬー」とか色々と叫んでいたと思う。そうこうしている内に、僕が楽しみにしていた、長嶋ジャパン対キューバ戦が始まった。しかも先発は松坂だ。でも、試合に集中することは出来なかった。途中、すきっ腹に流し込んだ鎮痛剤が効いているうちに、何度か浅い眠りに逃げ込むことも出来たからだ。でも、そんな朦朧とした意識の中でも、松坂の気迫の籠もったピッチングの迫力は伝わってきた。しかも、痛烈なライナーを利き腕に受けた後からのあのピッチングといったら!!僕は、たかだか歯が痛いくらいで、呻き、騒ぎ、世を嘆いている自分が情けなくなった。でも、痛いものは痛いのだ。結局のところ、人間の出来具合が違うのだからしょうがない。日の丸を背負って投げる松坂とカップル喫茶の店長では、比べるほうが失礼ってなもんだ。

眠気と頭痛と歯痛と気分の悪さの中、また少し眠ることが出来たので、最後まで観戦することは出来なかったけど、そんな幸せな状態が長く続いてくれるあろうはずもなく、眠気が覚めた朝6時くらいから、歯医者がオープンする9時まで、もんどりうって、地獄をさまよい続けた。

9時ぴったしに、ここから徒歩3分程のところにある歯医者に行った。げっそりとやつれた顔で。(もちろん、シャワーを浴び、歯も磨いた)。受付のおねえちゃんに、「すみません。予約をいれてないのですが、昨晩から歯がものすごく痛くって・・・」と言うと、すぐに通してくれた。院長先生に痛むところを見せると、「うーん。どれどれ。あー、ひどいねー。麻酔をかけて治療しないとね」と言われた。すぐに、3,4本位の局部麻酔をされたかと思う。しばらくして、麻酔による無感覚の変な感触が、歯の痛みに変わった。その後、安心して、治療を受けていた。ああ。これであの苦しみから救われると。しかし、そう簡単には終わってくれなかった。麻酔が効いていると、全く無警戒の状態でいたところ、脳天をハンマーでかち割ったような衝撃が急に僕を襲い、僕は、あまりの痛さに顔を歪め、右手を上げて、院長先生に訴えた。「え?痛い?あちゃー、麻酔が効かないかー。炎症がひどいと麻酔が効かないんだよね。そうなると・・・。炎症している箇所に直接注射するしかないか・・・」と最後のほうはぼそっと言った。大口を開けて言葉が出ない僕は、それを聞いて、また別の意味で言葉を失った。(え?!それって痛い箇所に直接注射針を刺すってこと?)と思ったのも束の間、再び、信じられないほどの衝撃が脳天を襲った。僕の言葉にならない叫びは、「グググググガァーー」だったろう。麻酔がすぐに効いてその痛みは、ほんの5秒ほどだったかと思うけど、終わったら、僕は泣いていた。三十路を過ぎて、歯医者で泣くなんて・・・。寝小便の次くらいに恥ずかしいよな。